2011年07月17日
不動産賃貸の更新料
マンションの借り主が賃貸借契約の更新時に貸主に支払う「更新料」は消費者に一方的に不利益を押しつける「無効」な契約条項だとして、借り主が貸主を相手に支払い済みの更新料の返還などを求めた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は15日、「更新料は有効」との初判断を示した。
(引用:毎日jp)
平成21年の調査によると、首都圏や京都では、商慣習として契約更新時に更新料を請求する不動産会社は約9割にも上るそうだ。
今回、もし更新料を請求することが無効である旨の判決が出ていたら、全国で更新料返還訴訟が一気に提起されたでしょう。(平成18年のグレーゾーン金利に関する最高裁判決が出た時を思い出します。)
最高裁判決は、現状を踏まえ、不動産業界に混乱を来さないように配慮したのかもしれません。
ただし、今回は、賃貸借契約書に更新料が一義的かつ具体的に記載されているケースの判決であるから、当初の契約書に何ら更新料について記載されていない場合、更新時に更新料を請求することが有効かは判断されていない。
最後に、参考までに判決の要旨を掲載しておきます。
判決の要旨
更新料は、期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有し、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。
また、一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前、裁判上の和解手続等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとして、これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。
そうすると,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。
投稿者 司法書士拓実リーガルオフィス